from 校長室

栗原の落ち着いた秋 新たな出会いを

 10月に入っても30℃に迫る気温の日が続きましたが、最近は朝晩10℃台まで下がりめっきり秋らしくなりました。古典の授業で学習したと思いますが 平安時代に清少納言が書いた『枕草子「春はあけぼの」』のなかに

  秋は夕暮れ 夕日のさして山の端いと近うなりたるに 烏が寝どころへいくとて 
 三つ四つ 二つ三つなど 飛びいそぐさへあはれなり。まいて雁などのつらねたるが
 いと小さく見ゆるいとをかし。風の音、虫の音など、はたいふべきにあらず。

とあります。京都の平安京から見た比叡山等の景色を描いたものと思いますが、今の栗原の風景にぴったり重なるなあと感じています。
 雲一つない澄んだ秋の空 夕日が西に沈もうとするあたり 栗駒山がこちら側に迫ってくるようにはっきり見え 雄大で美しい。烏が夕日を背に数羽飛びかうなか その上を雁が遠い北の国から伊豆沼に隊列を組んで帰ってきました。涼やかな風が稲わらを燃やす煙や匂いをはこんでいます。遠くから鈴虫の音が聞こえます。たまに奇妙な動物の声が聞こえるときがありますが・・・。取り入れが終わり、ほっとした落ち着いた空気はなんともいえない心地よさを感じます。 
さて、そんな落ち着きのある秋。「読書」に最適な季節です。毎朝読書を習慣としている築高生は、その効用を自覚しているはずです。作家の五木寛之さんが読書のよいところを次のように話しています。
「活字を読んで、その内容を自分のものとして身につけることは、孤独を耐え忍ぶ力になります。人間というのは、仲間や友人とのつきあいがないとさびしいし、世間との距離を感じるのは耐えがたいことですが、本を読むというのは友達がたくさんいるようなものですから、孤独を感じなくて済むんです。『ああ、自分と同じ考えを持っている人がいるんだな』と気づいたり、著者や登場人物の考えが自分とそっくりだと感じて心強く思えたり。本を友としていれば、人間はさびしくないのです」
 少し遅いのですが、この秋今年の本屋大賞「成瀬は天下を取りに行く」とその続編「成瀬は信じた道を行く」を読みました。そこでヒロインの「成瀬あかり」さんに出会いました。確かに今時の女の子と違い「変わった子」です。武士のような言葉遣いで周りから距離を置かれています。しかし成瀬はそんな周りの目を気にすることなく、やりたいことに次から次へと挑戦していく。「小さな種を撒きまくって、1つでも大成すればそれで十分」「今まで200歳まで生きた人がいないのは、『200歳まで生きようと思った人がいなかったから』だから、私は本気で200歳まで生きるとここに宣言して実行する」「たとえ失敗しても気にしない。その挑戦の過程で得られた経験は、その目標を達成しようと思わなければ得られなかった。そして、その経験はこれからの人生の糧になる。」何かと人の目を気にしがちな風潮がある昨今、成瀬の振り切れた言動と持てる力を常にフルに使い一生懸命に行動する姿は私のようなおじさんにもとっても刺激になりました。
 秋の夜長、鈴虫の音を聞きながら落ち着いて読書してみましょう。新しい友達との出会いを楽しみましょう。