from 校長室

第19回卒業証書授与式を終えて

 3月1日(金)卒業式が挙行され157名の卒業生が巣立っていきました。平成31年3月以来、5年ぶりに在校生が参加し、またたくさんのご来賓と保護者の皆さん総勢800名を超える多くの方々に見守られ、厳粛な中にも暖かさのある素晴らしい式となりました。 
 卒業した3年生は、コロナ禍まっただ中に入学しました。数々の制限がある中で高校生活の大半を過ごし、自分を表現できず苦しんだことも多くあったと思います。しかし、様々な個性を持つ仲間と、互いに認め合い、助け合い、学びあって成長してきました。今年度に入り新型コロナウイルス感染症が5類に移行して制限がなくなり、すべての行事を以前同様に行うことができるようになりました。応援練習、対古川高校定期戦、築高祭、体育祭、地域のお祭り等のボランティア活動など、1・2年生で十分に経験できなかったにもかかわらず最高学年として責任を持ち、創意工夫して新たなスタイルを整え後輩に模範を示してくれました。また、我々教職員もそのような献身的な姿から、よりよい教育の在り方について思いを巡らせ、考えを深めることができたと思っています。
 特に前生徒会長が答辞の中で、コロナ禍で思うような活動ができずモヤモヤしていた気持ちを先生方にぶつけるなど様々な葛藤がありながらも、対話を繰り返す中で、さまざまな気づきを得ることができ、そこから大きく成長できたことなどを涙ながらの語ってくれました。また、式の最後の校歌斉唱では、3年生が大粒の涙を流しながら母校への感謝も思いを胸に力一杯声を張り歌っていました。また、後輩たちも先輩への感謝とその門出を祝うべくいつも以上にしっかり歌ってくれました。築高生の思いが詰まった歌声に感動し、私も感極まってしまいました。
さて、これからの次代を担う築高生には、急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎えた我が国において、1人ひとりが持続可能な社会の担い手として、その多様性を活力とし、質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくことが期待されます。
 しかし、情報化やグローバル化が急速に進展する現代社会は、多様な事象が複雑さを増し、変化の先行きを見通すことが一層難しくなり、何が正解なのかは誰にもわからない、予測困難な社会となっています。2019年に出現した新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延は、その混沌とした状況に拍車をかけただけでなく私たちのコミュニケーションの在り方にまで依然として深く影響を与え続けています。
 さらに一昨年2月に起きたロシアのウクライナへの侵攻は収まる兆しがなく 昨年にはイスラエルとパレスチナの紛争が勃発し、中東諸国を巻き込み大きな混乱を招こうとしています。国内においても地球温暖化による気候変動、年始には能登半島地震が起きるなど災害が絶えません。石油をはじめ穀物などの物資が滞り、多くの国において原材料不足を招き物価高騰を引き起こしています。
 こうした社会経済の大変動の一方、今日、人類は未だかつてないほどの加速度的なテクノロジーの進展を経験しています。「Society5.0」とも呼ばれる新たな社会の到来が、社会や生活を大きく変えていくという未来予測がなされていますが、人々の生き方や価値観に大きな変革が求められる未来社会への漠然とした不安は、未だに払拭されていません。
そうはいうものの、変化が激しく予測が困難でも、決して未来が閉ざされているわけではありません。しかし、「ほどほどの自分」や「まあまあの生き方」に満足してはその重い扉を開くことはできません。築高生には、常に「なりたい自分」を更新し、多様な他者と協働し、よりよい社会の在り方を模索しながら、自分の望む人生をたくましく切り開いていくことを期待しています。